事務所サイトはコチラ 事務所紹介 お問い合わせはこちら

―新人弁護士のキャリアデザイン―
日本の弁護士、法律事務所のあり方から考える

セミナー内容

日時:2015/11/19(木) 2015/11/25(水)  両日15:00-17:00
第1部が基調講演、第2部がパネルディスカッションです。

第1部 基調講演【新人弁護士のキャリアデザイン】

講演者:浅野了一

目まぐるしい勢いで士業の世界のあり方が変わってきました。そしてそれは今後も変わっていくはずです。では、どのように変わっていくのか、まずは【環境変化の予測から考える】というテーマで考えてみます。

まずは1)弁護士人数の増大の一方で人口の大幅な減少です。
2050年ころには今の倍近くの7万人前後まで増加するとみられています。その一方で、人口は2060年には3分の2の8000万人まで減少すると考えられています。

そして、2)他士業の職域の法的・事実上の拡大と弁護士の職域の事実上の減少も防げないと思っています。その現実を見てみましょう。

① 特に、一般民事法の主要分野である相続・遺言・後見などの相続・遺言・高齢者問題の分野では、顕著です。

弁護士は、相続・遺言・高齢者問題の分野では、他士業に劣勢で、一部の有力な法律事務所を除いて市民の相談窓口ではなくなっております。
市民の相談・遺言・高齢者問題の相談窓口は、司法書士、行政書士になっております。
相続の各種手続だけでなく、遺言書作成事務、遺言執行事務は、司法書士・行政書士が弁護士に優勢であります。
司法書士は、申立代理権がないにも関わらず、後見申立、後見人業務、相続放棄の申述などの案件では、事実上代理人と同様に扱われる運用がされており、弁護士と競合しております。

② そしてそれは、家庭裁判所の案件だけではありません。破産申立、個人再生申立などの倒産法の分野でも、司法書士は申立代理権限がないに関わらず、事実上申立代理人のように扱われております。

③ 同様の問題は、労務問題での社会保険労務士の活躍、社内規定、株主総会、取締役会議事録等の作成業務分野への司法書士、行政書士、社会保険労務士の進出にも見られるものです。

その背景を考えましょう。タイムチャージの高低・収入の多寡から考えれば、理由は明確です。

タイムチャージ・収入の高低・多寡

弁護士>税理士>司法書士>社会保険労務士>行政書士

IT化とAI(人口頭脳)の発展により、業際の境界は、低くなるばかりで、タイムチャージ・収入の平準化が進むのです。IT化とAIの発展に起因して、将来は資格の統合の問題は必至であるうえに、さらに、資格による業務独占、例えば弁護士法72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)の廃止の議論が高まると思っております。

最後に3)日本国内での外国人・外国法人の増加です。医師免許もそうですが、近い将来外国の法曹資格をもっている方が日本で日本法を取り扱える日がくるのはそう遠くはないと思われます。

このように、弁護士の市場は、縮小する一方です。これからは、当面は他士業から侵食されない最後の領域―民事の紛争案件の代理人業務と刑事弁護人の業務だけが残され、それを取り合う弁護士間の競争がより激化していくでしょう。次には、資格の統一と弁護士法第72条の廃止の議論に進むでしょう。

このように厳しい環境におかれていますが、その中で生き残れるチャンスはないか?どのような対策がとれるかを考える必要があります。
弁護士として、法律事務所として、独立した社会的存在として、生き残る道を選んだ場合は、どう対策するかは重要な厳しい問題となります。
その対策は以下4点だと思っております。

①専門化によるサービスの品質向上の推進

市民と中小企業は、弁護士が専門化してサービスがよりよくなることを望んでいます。

②総合的法律経済関係事務所を目指す。

市民と中小企業は、弁護士・司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士・弁理士などの各分野を融合したコンサルティング・サービスの提供を望んでいます。

③組織化と対応地域の拡大

市民と中小企業は、サービスの対応地域の拡大を望んでいます。そのためには、グループ化・連携・合併が必要です。

④ 英語・中国語への対応。

外国の人・物・サービス・情報の移動の自由が一段と進んでいくグローバル社会では必須だと考えます。

険しい道ではありますが、こういった対策をとることで、この厳しい状況を独立事業者として乗り越えられると考えています。

この問題に気づき、今までの常識にとらわれずに対応していくことができるかが、今後の弁護士と法律事務所に求められていることだと思います。

弁護士キャリアの多様化

現在、法律事務所は二つの競争にさらされています。それは、クライアント獲得競争と人材獲得競争です。

どうして人材獲得競争が起きているのかについて、以下の2点が挙げられます。

  1. ①インハウスローヤーとGeneral Counsel(法務最高責任者)の登場
  2. ②税理士事務所、司法書士事務所と同じ名称の法律事務所・弁護士法人の開設

弁護士の就職先増加=キャリアの多様化です。しかし、反対に、弁護士として「選ばれる力」が必要になってきています。

弁護士として選ばれる力

弁護士飽和時代故に他社との差別化が必要です。それが専門化です。社会が専門性を求めており、その動きが加速しています。依頼者の立場に立って、「どの弁護士に頼むか」と悩んだときに、依頼者はその分野の経験豊富な弁護士に頼みたいと思うのは当然のことです。専門性の追求と共に付加価値として+αのライセンス(資格)を取得している人も増えてきています。

では、そもそもなぜ、選ばれる弁護士にならなければならないのでしょうか。
仕事は、依頼者に依頼されなければ、始まりません。自分が事務所からあるいは依頼者から、仕事を依頼されるようなるしかありません。勉強や研究だけでは、仕事ができるようにはなりません。弁護士として、力をつけるには仕事をするしかありません。
仕事の多い恵まれた環境に身を置くことは、今後のキャリアを考えるには最重要です。

スキルを磨き続けて、非競争の領域へ

事件処理件数において上位に行くほど、プレイヤーの数は激減します。
アマチュア弁護士で終わるか、プロの弁護士になるかの選択を迫られています。
非競争の領域の種類について、以下の2つが挙げられます。

その人にしかできない事件処理領域

高度な専門知識を駆使した事件処理を必要とするものです。

豊富な経験を要する事件処理領域

参入障壁が高い領域のためプレイヤーの数も限られており、仕事もあふれています。

キャリアデザインを描く上でのポイント

どのような専門性をいつまで持つか計画する。

現実問題として、インハウスを除く一般弁護士は毎年1,000人以上増加しています。一方で、弁護士の市場は急速に縮小しています。

数多くの案件をこなして自分の強みを作る。

何件扱ったかが重要で年数ではありません。

案件を獲得すること(できること)を優先的にする。

まとめ

業界は過渡期にあり、日々の変化が激しいです。その中で生き残るためには、短期(1,2年)と長期(10,20年)のビジョンとのギャップを絶えず考え埋める努力をする必要があります。