杉浦 恵一Sugiura Keiichi新63期司法修習生 2010年入所
忘れられないエピソード
弁護士になってまだ7年強ですが、依頼者の方との関係に思い悩むことがあります。弁護士という仕事は、刑事では弁護人として、被疑者・被告人の弁護をすることになりますが、弁護士独自の権限として一定の手続きをとることができます。
民事事件では、弁護士は、あくまで、交渉や調停・訴訟の代理人という立場になります。あくまで、依頼者の方の意向に沿って手続きを進めていくことが原則になります。このような中で、刑事・民事に関わらず、つまり、被疑者・被告人であっても、民事事件の依頼者の方であっても、基本的に弁護士に任せるという方がいらっしゃいます。もちろん、微妙な法律の知識や書面での書き方、証拠の見せ方といったことで結論が変わってくることがありますので、最後は弁護士を信頼して、細部については任せていただく必要がある場合があることは否定できません。
しかし、最初から最後まで弁護士に任せるということになりますと、本当に自分の判断が依頼者の方の意向に沿っているのか、どうしても不安になってくることがあります。時間をかければ取得できる額が大きくなるけれども、多少妥協してでも早く終わらせた方がいいのではないか、譲歩すれば早く終わるけれども、最大限時間をかけてでも最大限の主張をした方がいいのではないか。そういった方針の段階では、結論を得るまでにどれくらい時間がかかるかが不透明ですし、得られる結果がどれだけ良くなるかも不透明です。そのため、特定のエピソードではありませんが、信頼して任せていただいた依頼者の方が、どこまでご納得されているか、そのあたりが事件終了後も振り返ってしまい、忘れられないことがあります。